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コラム

「いいね!」は全世界共通か?


Facebookで言語設定を英語にすると、「いいね!」ボタンは「Like」という表記に切り替わる。しかし「Like」という単語は、直訳すれば「好き」という意味であって「いいね」という意味にはならない。つまり「いいね」は、日本人の感覚に合わせて意訳された表現だ。では、今やFacebookの代名詞ともなったこの「Like」ボタンは、他国のユーザーにとってはどういう意味で認識されているのだろうか?

■「いいね文化圏」と「好き文化圏」

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※ヨーロッパエリアは、Facebookで使用できる言語が複数あるため、地図上に正しくレイアウトされていないものもあります。
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表題の問題に対して結論を言えば、Facebookのインターフェース上で使用言語として選択可能な全77言語のうち、日本を含むアジア3ヶ国語のみが「いいね」という表現を採用し、それ以外の73言語は「好き」(英語のLikeに該当)という表現を使用していることが判明した(注1)。

注1)
ここでの「好き」型の言語は、英語のLikeに該当する動詞を使用しているもの。例えばフランス語のJ’aime は「私」+「好き」である。また本調査結果では「~が私を喜ばせる」という構文も「Like」のバリエーションとして扱う。例えば、Gef?llt mir(独語)やMi piace(伊語)、Me gusta(西語)の直訳はそれぞれ「~が私を喜ばせる」(英語のit pleases meに該当)であるが、本調査ではLike型もIt pleases me 型も共に、好意を表明する動詞を使用しているという点で、「好き」文化圏に分類している。なお、[表1]にある「英語(Pirate)」については、本コラムでは「いいね」「好き」どちらにも当てはまらないとみなす。

■「いいね」は現状たったの2ヵ国のみ

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[図2 Facebookの言語別ローカライズ事例]
アラビア語など右から左に向かって綴る言語については、画面レイアウトが左右反転している。該当する言語は74言語の中で4言語のみである。

「いいね」の意味を持っているのは、中国語(簡体字・繁体字(注2)を含む)と韓国語と日本語のアジア3言語に限定されている。ただし中国については、社会的な規制により、独自のSNSメディアが目下中国内で浸透中のため、ここでの中国語使用エリアは主に香港・台湾・マカオという限られた地域だけとなるので、現在の「いいね文化圏」は日本と韓国の世界にたった2ヵ国のみともいえる。統一された規格・デザインであると考えられていたFacebookインターフェースは、実はたった2ヵ国のために、きめ細かにローカライズされていたということだ。

注2)
簡体字:中国本土で使用、簡略化された漢字を用いる。繁体字:台湾で使用される中国語、簡略化を経ない伝統的な漢字表記を用いる。香港で使用される中国語(広東語)も伝統的な漢字表記を用いる。

■なぜ、日本語では「好き」ではなく「いいね」なのか
Facebookがまだ日本でローンチされる以前、LikeボタンはAwesomeと表記されていたらしい。Awesomeの文字通りの意味は、「畏敬や畏怖の念を抱かせる、荘厳な」であって、それが転じて俗化すると「いいね、かっこいい、すばらしい」となる。アメリカ本土に行くと人々が頻繁にGreatと並んでAwesomeと連呼するのを耳にしたことがある人は多いだろう。それくらいカジュアルな単語で、ささいな感動にもAwesomeと口にする。言語文化の違いと言えばそれまでだが、少なくとも日本人はアメリカ人のように「素晴らしい!最高だね!とても良いね!」と口にだして表現する文化や風習はあまりない。むしろ日本人は、主語を秘匿したり、ほのめかしたり、豊富な修飾語で包み込んだり、微妙なニュアンスで表現するのを得意としており、それ故に自身の感情を前面に押し出した “Awesome”や”Like”を人前で堂々と表現するのは、少なからず心理的な抵抗がある。他人への褒め言葉や賛辞を「構いません。問題ないです。悪くないですよ。」と否定語を否定することで表現する傾向のある日本人には、「好き」に至るまでの精神的距離は遠いのではないかと考えられる。
それを踏まえて考えてみると、もし今日のFacebook日本語版にあるのが「好き」ボタンだったら、気軽な口コミツールとしてここまで機能し浸透しただろうか・・・?

Facebook日本語版は2008年5月に公開されたが、その日本語翻訳はFacebookユーザーがボランティアで行ったものだ。430人が3週間かけて約1500文を訳し、訳文の選択は投票によって決められたという。文化特性や言語特性に配慮した翻訳側の工夫や苦労がうかがえる表現も多い。私たち日本人が使用するユーザーインターフェスで「いいね」が採用されたのも、この過程で日本人自らが翻訳を行った結果だろう。このネイティブ視点の翻訳があったおかげでFacebook「いいね」ボタンは感覚的な抵抗もなく、日本で広まっているのではないだろうかと思う。

参考サイト

◎いいね!ボタンの歴史

◎Facebook翻訳

◎Facebookが日本語版スタート